先週末、ISSEY MIYAKE のクリエイティブアドバイザーの藤原大さんの講演会に行って来た。ちょうと1ヶ月半前、那覇で個展をやったとき、仲間内で「パリコレで、芭蕉布や宮古上布、紅型など沖縄の伝統的な布を使った人」ということで話題になっていたので、これは何を差し置いても行かねば・・と、はるばる那覇まで出かけて行った。
講演はコレクションのスライド、ビデオを交えて、たっぷり2時間。期待通り、いやそれ以上に、聞いている側から自分の心が弾んでくるのが実感できるような、実に魅力的なお話だった。
中でも面白かったのが、年2回のコレクションを作っていく過程。
まず、コレクションの大きなテーマを決める。これはあまり脈絡がなく、そのとき藤原さんの頭に降りてきたものをテーマにするとのこと。あるときは”掃除機”、またあるときは”空手”。何故”掃除機”がテーマ?と、思うが、藤原さん曰く、「頭に”掃除機”が降りてきてしまうのだから仕方がない」のだそうだ。
そして、例えば”掃除機”だったら、まず掃除機について徹底的にお勉強。掃除機の大手メーカー、ダイソンの技術者に話を聞き、掃除機のしくみや成り立ちを勉強する。また掃除機が吸い込む風について、ヨットの専門家に話を聞く。そしてある程度、風、掃除機について理解してから、素材、デザインの企画に進んでいき、その中から、風をはらむ素材、掃除機の部品をデザインした服が生まれてくる。
また”空手”の場合は、本物の空手家を招き、スーツを着て空手の演舞をやってもらい、その動きをまず徹底的に研究。そして、布の素材、動きやすい仕立て(空手の動きにも耐えられるスーツ?)を創り上げていく。そして実際、パリコレのショーのときにも、冒頭にその空手家の方がスーツを来て演舞をしたとか・・。半端じゃない。
面白いのは、”動きやすいスーツ”というコンセプトが先にあるのではなく、まず”空手”というテーマが先にあり、後から”スーツを着て空手をやる”というコンセプトが生まれてくるということ。
これは、何か新しいものを生み出すための”藤原流”の発想の仕方なのだろうか?”服”を作るのだけれども、最初に”服”から入るのではなく、まず”服”とはかけ離れたところから入っていく。そして、そんな未知の分野の勉強を重ねていくうちに、次第に”服”に近づいていく。その過程は、苦労も多く大変なことだと思うが、まさに新しいものを創り出していく醍醐味がたっぷり詰まった心踊る時間なのだと思う。
色についても、”本当の色を探す”いうコンセプトで、南米のアマゾンまで森の色を探しに行ったり、八丈島の海に潜り、本当の海の色を探し出す。藤原さん曰く、本物の自然の色を見ることなく、今ある”森の色””海の色”という情報や既成概念をあてにしていては、本物のクリエイトは生まれないとのこと。
発想の転換。新しいものを作るとき、一度頭を空っぽにする。頭を真っ白にする。全然違う方向からアプローチをしてみる。これは何もデザイナーに限られたことではなく、広くものつくりに携わる人みんなに言えることだと思う。もちろん私にも・・。