今日は、20余りある芭蕉布の最後の工程、洗濯のお話です。
”洗濯”と一口に言っても、水でじゃぶじゃぶ洗うわけではありません。
ものによっても違うのですが、仕立て帯(9寸名古屋帯など)や着尺の場合は、織りっぱなしの状態では繊維も固くごわごわしているので、まず木灰汁で炊き、柔らかくします。
時間は糸の太さや固さ、木灰のPHなどによっても様々ですが、帯の場合、大体1時間くらいでしょうか。
その後、水洗いをして干しますが、アルカリの成分のせいか、パリパリとスルメみたいに固まってしまいます。
あの美しい芭蕉布がこんな無惨な姿に・・と最初の頃はびっくりしましたが、でも、大丈夫。
この後、ユナジという、おかゆに水ともち粉を入れて発酵させた液(プーンとヨーグルトみたいな匂いがします)につけ、再び水洗いをすると元に戻ります。
このユナジ、酸っぱい匂いがすることからもわかるように酸性です。
芭蕉は原皮を炊くときもアルカリ、そして最後、反物を炊くときもアルカリなので、この液で中和させます。昔は、身近にあったシークワサーなどでも中和させていたそうです。
この液は、1週間くらい前に作って発酵させておくのですが、以前はお米がもったいないので、ユナジ用に安いお米を買っていたのですが、たまにしかやらないし、結局余らせてしまいもったいないので、今は普通に食べるお米を使っています。
この日は、最近お気に入り福島産、こしひかり。
贅沢ですね〜。
そして再び水洗し、7分乾きの時に取り入れ、斜め方向に布を伸ばし幅を出します。
また2人で縦方向に引っぱり、長さも出していきます。
芭蕉布は湿っていると、結構伸び縮みし、ゴムのようにびよ〜んと伸びることもあり面白いです。
でもあまり引っぱり過ぎると、今度は幅が足りなくなって大変なのですが。
そしていよいよ最後のお仕事。
適当な大きさにたたみ、湯のみ茶碗を伏せてタテ、ヨコ、布目にそってこすり表面を平らにします。
このとき、苧績みしたときの糸の結び目もつぶれ、目立たなくなります。
茶碗は、お茶を飲むときに使うごく普通のもので、最近のお気に入りは、一昨年、読谷の陶器市でおまけにもらった北窯のもの。
厚みがあり、適度に重みもあり、力が入れやすく重宝しています。
などなど・・一口に洗濯と言っても、なかなか大変です。
特に腰痛持ちの私には、ずっと座ってやらなくてはいけないので、かなりきついです。
でも、きれいに仕上がった布を見ると、そんな苦労も吹っ飛んでしまうのですが・・。